1066年。
エドワード懺悔王死後に巻き起こった三つ巴のイングランド王位継承戦争は、フランス人のノルマンディー公ウィリアムが勝利し、ノルマン朝イングランド王国が成立した。
一方、グレート・ブリテン島中央部にはマーシア公とノーサンブリア公を兼任したウィッチェ家のモルカルがブリテン島最大勢力として存在。
ウィリアムは彼を懐柔し味方につけようと様々な手を用いるが、モルカルはいつの日か来るはずの復讐の機会を着々と窺っていた。
そして1076年6月16日。
さらにこれを継承した嫡男のロバート1世も、2年後に「不可解な死」を遂げることとなる。
後を継いだのは生まれたばかりの幼王ロバート2世。
これを好機とばかりに、モルカルは1077年4月にイングランド王位簒奪を狙って蜂起。
さらにロバート2世の叔父(ロバート1世の弟)のノルマンディー公リチャードも、弟のデヴォン伯ウィリアムと共に蜂起し、再びイングランドは三つ巴の権力争いの舞台となった。
この戦いは1078年9月26日のオックスフォード平原の戦いでモルカル軍が勝利したことで決着。
1078年11月9日。
首都ロンドンも占拠され摂政を務めていた王母ジュディスも捕えられたロバート2世勢力もついに降伏。
モルカルはウィッチェ朝初代イングランド国王モルカル1世として即位することとなる。
今回の物語はここから。
果たしてモルカルは巨大化した自らの王国を繁栄させることができるのだろうか?
Ver.1.9.0.4(Lance)
使用DLC
- The Northern Lords
- The Royal Court
- The Fate of Iberia
- Firends and Foes
- Tours and Tournaments
使用MOD
- Japanese Language Mod
目次
第1回はこちらから
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Victoria3プレイレポートはこちらから
虹の旗の下で 喜望峰百年物語:ケープ植民地編。完全「物語」形式。
パクス・ネーエルランディカ:オランダで「大蘭帝国」成立を目指す。
強AI設定で遊ぶプロイセンプレイ:AI経済強化MOD「Abeeld's Revision of AI」導入&「プレイヤーへのAIの態度」を「無情」、「AIの好戦性」を「高い」に設定
金の国 教皇領非戦経済:「人頭課税」「戦争による拡張なし」縛り
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国内の統合と外交政策
新たな王国を築いたイングランド王モルカルは、まずは戦争により混乱した国内の再統一を図ることとした。
まずは戦争により大きな武功を上げることとなったランカシャー伯「野人」エアドリックには、新たにランカスター公の地位を与え、イングランド北西部の統治を一任。さらに王国元帥の地位も与える。
そしてエドワード懺悔王の姪孫にあたり、その死に際して懺悔王自らが後継者として指名したというエドガー・アシリングは、その継承権をモルカルに譲る代わりに自らは王国中央の重要な領域を占めるマーシア公の地位を与えられ、王国家令の任務も約束されることとなった。
これら「旧勢力」への恩賞はもちろん与えつつ、新たに配下となった元ウィリアム王配下の公爵たちの権威もそのまま保持。その筆頭格となったのが「第2次イングランド王位継承戦争」の主役の一角であったノルマンディー公リチャード4世は、そのまま大陸のノルマンディー公国領を保持。さらに王国宰相という最も重要な宮廷内地位を与えることとなった。
そして「元イングランド王」ロバート2世も、ロンドンを含むイングランド中心部の重要なエセックス公の地位を保持し、懐柔。
その他、ブリテン島東部のイースト・アングリア公ヒューや南部のケント公ギルバートなど、ノルマン人諸勢力に元々の領地の支配を継続させるなど、モルカルは王国の統一を最優先とした統治を実施することとなる。
こうして国内の安定を図る施策を行いながら、さらに国際的な権威増幅と新たな同盟を模索するための「外交」にも、彼は精を出すこととなる。
1082年10月12日。
モルカルはときのフランス王フィリップから、ナバラ王サンチョ4世の姪でヒメノ家の末裔であるウラカとの「グランドウェディング」への招待を受けることとなる。
1083年の春にパリで開催されたこの盛大なる国際的結婚式の場で、モルカルは様々な出会いと交流を重ねていくこととなる。
式典が一段落したところで、アキテーヌ公のそばに行き、世間話に花を咲かせたが、そのうちに政治の話になった。
そして私は何気ない会話を交わしながら、自分が望む方向へと導いていった。
アキテーヌ公は不安げに呟く。
「最近、我が国が襲撃され、大変心配している・・・」
「必要な時に強い味方がいることはとても良いことですよ」
さらに晩餐会の場では、また別の機会が訪れる。
スピーチを頼まれたフランス王フィリップの叔父にあたるブルゴーニュ老公ロバート2世が、べろべろに酔った勢いで甥のフィリップ王の恥ずべき幼少期について触れ始めたのである。
お祭り騒ぎの中、叔父のブルゴーニュ老公ロバート2世が酒杯を手に立ち上がると、フィリップ王は恐怖の表情を浮かべ始めた。
学識あるブルゴーニュ公のスピーチは、文学の引用や高尚な哲学的ジョークが飛び交い、時折、フィリップ王の幼少期の恥ずかしい逸話を挟んでいたのである。
フィリップ王は恥ずかしさのあまり、死にたくなるような思いを抱いていた。
これを見ていたモルカルの取った行動は――
「丁寧に手を叩き、ブルゴーニュ公を止めた」
さらに、モルカルはこの結婚式場に参列する数多くの貴賓の中で最も注目していた人物への接点を手に入れることとなる。
その人物とはカスティーリャ王サンチョ2世。当代最強の騎士として謳われる「エル・シッド」の主君であり、自身も随一の戦略家として知られ強大な軍勢を率いている大陸最強の武王である。
この同盟相手としては最も相応しく頼りになる存在を味方につけるべく、モルカルはあらゆる機会を探っていたが、いずれもうまくいかないであろうことに気付きつつあった。
そのときモルカルは、サンチョ2世の友人として知られるフランスの平民「アマネウス」が楽しそうに酒を飲んでいる姿を目にした。
「なあ、サンチョ王は一体どんなことに興味があるんだ?」と、ひとしきり彼を楽しませたあとにモルカルは何気なさを装って聞いてみた。
「ああ、そりゃもちろん、戦術と戦略とに精通した最も勇敢な男さ!」
アマネウスの言葉を受け、モルカルは早速サンチョ王に近寄って、話しかけることにした。
「陛下、少しお話してもよろしいでしょうか。そんなにお時間はお取りしません」
仲間たちと共に飲食と会話を楽しんでいたサンチョ王は、突如声をかけてきた見知らぬ男に一瞬眉根を寄せ気難しい表情を見せるも、モルカルの姿を認めた彼はその瞳の奥に小さな好奇心を宿らせた。
「ああ、君はブリトンの王か。噂は聞いているよ。その勇猛さと、無謀さについて。で、何の用だって?」
「先日の男爵戦争について、ご存じですか? あの攻城戦は、見事なものでしたね!」
最先端の戦争の話はサンチョ王の興味に見事突き刺さったようであった。手に持った杯を机の上に置き、それまで話していた取り巻きたちにすぐさま背を向けたサンチョ王は、その後しばらくモルカルと話し込み、語りふけることとなった。
大陸の貴賓たちと交流し、親睦を深めることに成功したこの「旅」は、見事成功となったのである。
しかし一方、その旅の間王都で摂政を任せていた騎士アダムが横領を働いて露見したとの報告が耳に入る。
結婚式を終え領国に戻ったモルカルは、失望と共にアダムに対して摂政の解任を言い渡し、代わりに親友のランカスター公エアドリックをその役に就けさせる。
アダムに対してはその罪を赦し、改めて「旅の世話役」に任命。これからも引き続きモルカルの騎士として彼に仕え続けることを命じる。
アダムは自身の行いを悔い、一層の忠義を誓うことを宣言。
モルカルはその言葉を信じるほかなかったが、一方でこの騎士を疑おうとする自分の心にも気づき始めていた。
もう1つ、彼の信頼に影を差すような出来事が発生する。
実の兄弟のように信頼し、マーシア公にまで任命したエドガー・アシリング。
その彼が、モルカルの持つイングランド王位を狙っているとのうわさが、イングランド大司教スウィルゼムからもたらされる。
確かにモルカルは元々、本来のイングランド王位の継承権はエドワード懺悔王が自ら後継者と指名したエドガーにこそあると主張して先の第2次イングランド王位継承戦争を引き起こした。
しかしそのときすでにモルカルの臣下であったエドガーは、後の褒賞と引き換えに自らの王位請求権をモルカルに譲ることを明言していた。
その恩に報い、実際にモルカルは彼にマーシア公の地位を渡したのである。
にもかかわらず、今になってその王位を要求するなど・・・そんなことはない。彼はそのような男ではない、と確信するモルカルは、エドガーへの親愛と信頼を表明するための手紙を送り届けることとした。
しかし、その返事は返ってこなかった。
今や、マーシア公エドガーはモルカルにとって獅子身中の虫となった。
今はその勢力差が歴然であるため彼は行動には移さないだろうが・・・
かつての主君に起きた出来事を思い返し、モルカルは「そのとき」のために地盤を固めることを決意する。
もはや、信じられるのは血縁のみ。
モルカルは自らのウィッチェ家の繁栄のために取るべき行動を取ることを決意した。
一族の繁栄のために
まずは長女アガサの結婚相手を決めること。妻デニスは結婚直後にアガサをもうけたのち、10年以上にわたり新たな子の妊娠がなかったため、このアガサがウィッチェ家の跡取りとなる可能性が高く、婿養子となってくれる者を探していた。
1073年にはまだ5歳でしかなかったアガサの婚約相手として、アイルランドのドゥウリン伯ムルハダの次男エーナ(21歳)との婚約を締結。
しかし元々次男坊として大した待遇が約束されていない中で、16歳も年の離れた少女を未来の結婚相手として勝手に定められたことにエーナは反発。
突如、フランス人の平民の娘ボンヌと駆け落ちして出奔。イベリア半島にまで逃れる大逃避行を実行したのである。
この事実をもって、ドゥウリン伯は一方的に同盟を破棄。
仕方なくモルカルも、新たな婚約相手を見つける必要に迫られた。
そんな折、エオヴォルウィーチの宮廷に一人の客人が訪れていた。
彼の名はトルギルス・スヴェンセン。
現デンマーク王にしてノルウェー王も兼ねる北海最強の君主の1人であるエリク・スヴェンセンの弟である。
同じく兄弟であるスリースウィー伯ハーラルによる反乱にも遭っている最中のこのエリク王。
おそらくトルギルスもまた、この兄弟間の権力争いに巻き込まれ、そこから逃れるためにこのイングランドの地にまで渡ってきたのだろう。
内反足で不自由そうな動きを見せながら、心労によるものか酒浸りな日々を送りつつも、どこか物憂げな表情を時折見せるこの異邦人の存在に、婚約者に逃げられたばかりの娘アガサがどことなく惹かれつつあることをモルカルは気付いていた。
周囲の側近たちの中には、かつてこのイングランドの地を蹂躙したデーン人の血が王家に入ることをよしとしない者たちもいたが、その反対を押し切ってモルカルはアガサとトルギルスとの結婚を了承する。
その間の子がデンマーク王位に対する強い請求権を持つであろうこともまた、モルカルの思惑の1つでもあった。
何しろ、アガサに次ぐ子どもがなかなか生まれなかったことはモルカルにとっては焦りの種であった。
1079年にようやく生まれた2人目の子どもも女子であり、1082年の12月25日についに誕生した待望の男子エルヴガルもまた、生まれつきの「病弱」で先が長くないように思われていた。
いかな忠臣と言えど心からの信頼が寄せられない以上、真に頼れるのは一族のみ。その中でこの状態が続くのは・・・と絶望していたモルカルだったが、サンティアゴまでの巡礼の旅の途中で出会ったノルマン人の有能な「薬師」アダム・フィッツジェラルドが息子の治療のために尽力。
その結果、神への深い祈りが届いたこともあったのか、4歳を迎えたエルヴガルは見事、その病魔から回復。
一族の未来に向けての一筋の希望を、モルカルは手に入れることができるようになった。
それでは、この希望をさらに具体的な形にしていく必要がある。
すでにこの頃、義父*1のグウィネズ公プレディンや甥*2のデハイバース公イドゥアル・アプ・グリフィズなどウェールズ勢力がすべて臣従してきており、グレート・ブリテン島南部は完全に支配下に置いていたイングランド王モルカル。
続いてブリテン島北部を支配するスコットランド王国との「連携」を必要と判断したモルカルは、1090年10月8日、ときのスコットランド王マルコム4世の長女エラとエルヴガルとの婚約を締結する。
スコットランド王位の最高位継承者であるエラとエルヴガルとの結婚は、将来の両王国の合同を意味する。
当然、マルコム4世もこれを簡単には受け入れるつもりはなかったようだが、周囲でデーン人の勢力が拡大する中、ブリテン島最大勢力たるイングランド王との同盟の重要性も十分に理解していた様子。
そして決めてとなったのは結婚の際に「グランドウェディング」を催すとモルカルが約束したこと。
これにて、グレート・ブリテン島における世紀の大同盟が実現することとなったのである。
外交も順調。内政も種々不安はあれど、信頼するランカスター公エアドリックの管理の下、なんとかよく治まっているようにも思われる。
そして心配していた一族の繁栄についても、なんとか基盤は固められつつあるようにも思う。
ひとまず、安心。
イングランド王に就いてからひとときも心休まるときがなかったな、と思っていたモルカルは、1092年の冬、最大の親友にして狩猟頭でもあるランカスター公エアドリックや軍師アダムといったごく近い側近たちとのみ、冬の森における狩猟を楽しんでいた。
「陛下、ここには牡鹿の姿はなさそうですが、狐ならたくさんいそうですね。狡猾な彼らを追うこともまた、良い気晴らしになるかと思いますよ」
騎士アダムの言葉にモルカルはしばし、思案していたが・・・
「いや、狼を狙おう。かつて我が君主であったイングランド王は、こういう冬の森で狼を狩ってみせた。今も王宮に飾ってある毛皮はそのときに貰ったものだ。その狩りは私が案内をして成功させたものでもある。
今度は私が自ら、狼を狩ってみせるさ」
騎士アダムは不安気な表情を見せたものの、主君の意向に背くわけにもいかない。
彼らは森のより深いところへと潜っていった。
「陛下、見つけました。狼の群れです」
アダムの言葉に、モルカルも興奮を覚えながらその場所に近づいていく。
警戒する狼たちは牙を剥きだしにしながらこちらを威嚇し、そして藪の中へと逃げ込んでいく。
「追いかけるぞ!」
モルカルは自ら先陣を切り、森の中へと突っ切っていった。
何時間も走り続け、ようやく狡猾な獣を追い詰めることができた。
疲れているのか、それとも反撃しようとしているのか、狼はついに立ち止まり、こちらを向き、大きく吠えた。
狩人たちは唸る獣たちを取り囲み、獣たちはむき出しの牙を泡立たせて唾液を垂らしながら、モルカルを睨みつけている。
「私が相手しよう」
「勇敢」なモルカル王は、制止しようとする側近たちを払いのけ、自ら前に出て狼たちの前に立った。
それは彼にとって通過儀礼のようなものであった。この強大なるイングランド王国には数多くの「狼」たちがまだ潜んでいる。
目の前のこの現実の狼たちを自ら屠れなくして、どうしてより巨大なイングランドを治められようか!
しかし、かつて同じように「狼を狩った」ウィリアム王が、その後まもなくして息を引き取り、その王国をついには喪ってしまったことを彼は忘れていた。
とびかかってきた狼の2匹目までは、その類稀なる剣さばきにて難なく屠ることができたモルカルだったが、思いもよらぬ方向からとびかかってきた3匹目に対応しようと振り返ったとき、足元の雪にバランスを崩し、態勢を失ってしまった。
「陛下!」
アダムの叫び声が聞こえる。すぐに体制を取り戻そうとしたモルカルだったが、それよりも早く、狼が正確に喉元を狙ってとびかかってきた。
致命傷は避けた。しかし、肩口に熱いものを感じ、そして左腕に何か温かい液体が流れ出る感触を覚えた。
「ーーーーー!!」
誰かが何かを叫び声が聞こえる。
それが誰の声だったのかわからぬまま、イングランド王モルカルは深い、深い意識の谷へと沈みこんでいった。
1092年2月9日。
エオヴォルウィーチの宮廷に運び込まれた父の姿を見て、エルヴガルは恐怖に支配され、卒倒しそうになっていた。
しかし父の傍にいたランカスター公エアドリックはそんな彼を厳しく叱咤し、そして深刻な声で告げたのである。
「殿下、気を強くもたれよ。貴方は間もなく・・間もなく、この国の王となられるのだから」
エルヴガルはその言葉の重みをかみしめる。
この先に控える、自身に課せられた責任、そして試練の重みを。
そして、1092年5月10日。
医師たちによる懸命な治療も意味をなさず、イングランド王モルカルは二度と意識を取り戻すことのないまま、永遠の眠りについた。
安寧が約束されていたはずのイングランドは、みたび動乱の中へと誘われることとなる。
果たして、最後にその王位を手にできるものは・・・誰だ?
第3回へと続く。
感想はこちらから気軽にどうぞ(完全匿名制/Vic3の人気投票だけでなく、CK3の感想だけでもぜひ!)
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