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【Victoria3プレイレポート/AAR】革命と改革のメヒコ100年史 第3回 1880年代の政治動乱と「ポルフィリアート」(1880年〜1904年)

 

独立後の「サンタ・アナ時代」を終わらせたメキシコ合衆国

その立役者となったベニート・フアレスを中心とした自由主義勢力は、革新的な改革と積極的な外交政策、そして対アメリカ戦争での実質的な「勝利」と、政治的な成功を重ねていった。

 

だが、そんなフアレスも1872年に心臓発作に襲われ急逝。

その後の選挙で勝利した農業党のモイセス・ウトリラが新たな大統領として就任するも、同盟国ロシア・フランスが対外・対内政策で混乱している隙を突いてアメリカがみたびメキシコの領土を狙う。

ウトリラ政権はこれを受け入れざるを得ず、またもメキシコはその領土を失う屈辱を味わった。

そんな中、注目を集めたのが第一次米墨戦争で「カリフォルニア防衛戦の英雄」として名を馳せたポルフィリオ・ディアス

彼の提言を受けてメキシコは急速に軍備増強を進め、結果、1878年に勃発した第二次米墨戦争でメキシコはついに宿敵アメリカを打ち破った。

領土回復と共に、メキシコは総額619万ポンドという多額の賠償金を手に入れ、これもまた国家の発展に役立てられた。

 

今や、メキシコは世界有数の大国の1つとなっている。

このまま無事、平穏と共に幸福な20世紀を迎えることはできるのか。

それともーー。

 

Ver.1.3.3(Thé à la menthe)

使用DLC

  • Voice of the People

使用MOD

  • Cities: Skylines
  • Declare Interests Button on top
  • Extra Topbar Info
  • Historical Figures
  • Improved Building Grid
  • Japonism
  • More Spreadsheets
  • Romantic Music
  • Universal Names
  • ECCHI
  • Visual Leaders

 

~ゲームルール~

  • 戦争による拡張をしない(旧領奪還を除く)。
  • 「プレイヤーに対するAI挙動」設定は「無情」
  • 「AIの敵対行為」は「高い」
  • その他デフォルト設定

 

目次

 

第2回はこちらから

suzutamaki.hatenadiary.jp

 

これまでのプレイレポートはこちらから

虹の旗の下で 喜望峰百年物語ケープ植民地編。完全「物語」形式

パクス・ネーエルランディカ:オランダで「大蘭帝国」成立を目指す

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大地主経済:ロシア「農奴制」「土地ベース課税」縛り

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コンゴを自由にする

アメリカ「経済的支配」目標プレイレポート

初見スウェーデンプレイ雑感レポート

 

Crusader Kings Ⅲ、Europe Universalis Ⅳのプレイレポートも書いております!

 

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1880年代の政治状況

第二次米墨戦争の勝利を経てナショナリズムの高まりを見せつつあった1880年代のメキシコ。

現在のウトリラ政権はすでに死に体となっており、次の政権を巡る争いが活発化していた。

その中心に立ったのが、米墨戦争の勝利で支持を集めていた軍部

社会民主主義者の陸軍大臣ガスパル・オガソンは、農業党に属していたイグナシオ・サラゴサ将軍率いるブルジョワ勢力と、自由貿易党に属していたフアレス派(知識人)と結集し、新たにメキシコ自由党を設立した。

さらに勝利を盤石のものとするため、オガソンは近年勢力を拡大しつつある労働者党選挙協力を依頼する。

ウトリラ政権の支持基盤であった農場主たちも今や全面的にこの労働者党を支持し始めている。

 

この国で最も強力な労働組合であるメキシコ地域労働者総同盟(CROM)の指導者ペドロ・ゲレーロが党首を務める労働者党。独立戦争の英雄で初期の自由主義勢力の領袖の1人であったビセンテ・ゲレーロの孫にあたる人物だ。

両党は共通の敵である自由貿易の勢力を削るべく、選挙権から財産制限を撤廃する「普通選挙」法の制定を公約に掲げる。

ペドロ・ゲレーロの弟であるアナスタシオ・ゲレーロも、国内で高い人気を誇る扇動者として、国民にメキシコ自由党と労働者党への投票を呼びかけていく。

「扇動者」は他国から招聘するだけでなく、国内に扇動者がいないときは一定確率で「その国の扇動者」が出現する。


この結果、1882年の選挙で両党が圧勝。

自由貿易党を構成する資本家たちはその影響力を一気に失うこととなった。

 

新たに作られたメキシコ自由党・労働者党の連立政権。

オガソン大統領は公約通り選挙法の改正を目指し、ゲレーロ兄弟もここに全面的に協力した。

ゲレーロたち労働組合はもちろん、オガソン大統領の「社会民主主義イデオロギーもまた、普通選挙に対する支持を表明している。

 

1883年12月25日に普通選挙法が制定。

これで資本家たちはさらに力を失い、オガソンたちの政権はより盤石になるはずであった。

 

 

しかしオガソンが考えていたよりも遥かにずっと、労働者党を支持する労働者機械工農民たちの力は強かった。

これまでは所得制限にかかり投票権を持たなかった彼らが1886年の選挙において大挙して押しかけ、「扇動者」アナスタシオ・ゲレーロが彼らを扇動し、そして労働者党への投票を呼びかけていった。

同じタイミングで、メキシコ自由党の主要メンバーである知識人勢力の「汚職スキャンダル」が明らかとなり、その指導者ロムロ・ド・コスが辞任に追い込まれたこともまた、メキシコ自由党にとっては逆風であった。

あまりにも都合の良いタイミングでのこの暴露の裏には、ゲレーロ兄弟の暗躍があったとかなんとか。


そして1886年

今度は選挙協力は行われないまま、労働者党とメキシコ自由党との実質的な一騎打ちで繰り広げられたその選挙は、僅差での労働者党の勝利という形で終わった。

 

メキシコ合衆国第16代大統領として就任したペドロ・ゲレーロ

メキシコの政治は新たな局面を迎えつつあった。

 

 

1880年代の世界情勢

メキシコ国内が激しい政治変動の時代を迎えていた1880年代は、世界でも大きな動きが巻き起こる10年でもあった。

まず、1870年代末にスペイン人のブルボン王家ジーン1世が即位していたフランスでは、ポナパルティストたちによるクーデターが再び巻き起こり、ナポレオン3世の嫡子がナポレオン4世として即位していた。

クーデターを実質的に主導した従叔父のプランス・ナポレオンの意向もあり、帝政フランスは南米アルゼンチンへの侵攻を開始。

南米はすでにロシア帝国がその勢力圏に入れようと画策していた地域でもあり、このナポレオン4世の侵攻が、これまで長らく同盟国であったこの2国の関係を決定的に終わらせるきっかけとなったのである。

さらに帝政フランスは時代錯誤の「自然国境説」を唱え、オランダへと侵攻。

この横暴の蓄積により欧州各国はフランス包囲網を構築し、1882年9月17日に普仏戦争が勃発した。

狂犬フランス。この国が不安定であり、正式な同盟を結ぶべきではないと判断したフアレスは正しかった。


この戦争は1年後に皇帝ナポレオン4世が戦場で捕らえられたことによって終結し、パリにいたわずか5歳のナポレオン5世ことアントーヌ・ポナパルトは民衆の暴動を恐れた側近たちに連れられてイギリスへ亡命。

残されたパリ市民は共和国宣言を行い、アドルフ・ティエールを首班としたフランス第三共和政が成立した。

さらに同時期にオーストリア=ハンガリー帝国でも帝政廃止を求める共産主義者による革命が勃発しており、世界初の社会主義政権が成立。

欧州は「革命の時代」を迎えていたのである。

この「革命の波」は、やがて北米大陸にもやってくる。

1887年7月5日。

度重なる財政破綻米墨戦争の敗戦、およびそれによる賠償金負担から、税負担が一気に圧し掛かることとなった東部都市部の中低所得者層の不満を掬い取った若きリーダー、ウィラード・マウリーを中心とした自由主義社会主義勢力が一斉に蜂起。

アメリ自由主義連盟」を名乗り合衆国からの独立を宣言したのである。

わずか30代ながら、ニューヨークを中心に数多くの不動産と五大湖周辺の鉱山事業を手掛ける実業家でもある彼は、その気さくな性格と行動力によって階層を越えた多くの支持を集め、革命へと突き進んでいくこととなる。

 

隣国のこの混乱は、安定した国力をつけつつあったメキシコにとっては「チャンス」でもあった。

兼ねてより繰り返し我が国に対し侵略の意思を見せ続けてきたアメリカ合衆国に対する「逆侵攻」の、またとない好機。アメリ自由主義連盟のマウリー大統領も、メキシコに対して参戦の依頼を投げかけてきた。

しかし、「平和主義者ゲレーロ大統領は頑なにこれを拒否。

さらにあろうことか、この内戦によって再びメキシコがアメリカに侵略されることはないと判断したのか、「国民民兵」の法律を制定し膨れ上がった軍隊の徹底的な削減を図ろうとしたのである。

ゲレーロ兄弟のこの「勇み足」が、メキシコに新たな混乱を生む。

この国はまだ、安定への長い長い旅路の途上に過ぎなかったのである。

 

 

ポルフィリアート

グアダラハラ計画

1888年1月10日。

メキシコシティに次ぐ国内第2の都市グアダラハラにて、審議中の「国民民兵」法の廃案と、ゲレーロ大統領の即時解任を求める「グアダラハラ計画」が宣言される。

起草者はビセンテ・リーヴァ・パラシオ、イリオネ・パス、プロタシオ・タグレらいずれもポルフィリオ・ディアス将軍の支持者(ポルフィリスタ)たちであり、同じくポルフィリスタのエルミネジルド・サルミエント大佐率いる軍将校グループによって署名された。

3月21日。

ゲレーロ政権が宣言を無視したことを受け、ポルフィリスタたちは武力蜂起を決定。ディアス将軍の指揮の下、反乱軍はただちにオアハカベラクルスサン・ルイス・ポトシなど諸都市を攻撃。さしたる抵抗もないままこれらの都市の守備隊は降伏し、5月には首都が完全に包囲されてしまった。

ゲレーロ政権はただちにイグナシオ・サラゴサ将軍に救援を依頼。ユカタン州に配備されていたサラゴサ将軍は15万の兵を率いて反乱軍と対峙する。

そして6月9日。

シウダー・デル・カルメンの地で繰り広げられたサラゴサ軍とディアス軍の激突。

およそ8時間に及ぶ激戦の末、最終的にはサラゴサの軍が2倍以上の損害を出して大敗。

勇猛果敢に戦ったサラゴサ将軍も、最後は砲弾の直撃を受けて戦死してしまった。

その後、包囲されたメキシコシティも3か月に及ぶ籠城戦の末に降伏。

陥落前夜、支援者に導かれて密かに首都を脱出していたゲレーロ兄弟はそのままアメリカへと亡命しており、反乱軍はわずか半年間の戦いで完全な勝利を手にすることとなった。

翌年7月。形式的な選挙が執り行われ、唯一の候補者となったヴェヌスティアノ・ディアスポルフィリオ・ディアスの弟)が勝利。大統領に就任する。

こうして、ポルフィリオ・ディアスのとその支持者たちによる支配体制、ポルフィリアートの時代が到来する。

 

独裁体制の完成

権力を手に入れたディアス兄弟は、その改革への第一手として、自分達の権力の基盤を確固たるものとすることを目指した。

ディアスの反乱はメキシコ自由党および労働者党政権の際に蔑ろにされていた資本家たちの協力が後ろ盾としてあったが、その資本家たちが請願する「寡頭制」の制定をまずは目指す。

新バージョンで追加された新しいシステム「政府への請願」。(この寡頭制のように)意外と面倒な法律を要求してくることも多く、失敗したときの支持マイナスペナルティも大きいこのシステムは、政治の思い通りにならなさを反映する中々よいシステムにも思える。

 

1890年9月7日に制定完了。

これで議会は解散させられ、ディアス将軍と資本家たちの代表であるアドリアン・コルゾ、およびその側近たちによる「統治評議会」によって政策が運営されることとなる。

さらに「秘密警察」の制定によって警察権力を強化し、今後反乱を企図する勢力が出てきた際にはこれを適切に鎮圧できる体制の整備を目指す。

アルバレス将軍やフアレスが作り上げてきた市民の基本的自由が脅かされる事態に対し、自由主義勢力によるディアス大統領への爆破テロ事件も発生。

しかしこれもすぐさま鎮圧され、逆に政権による警察権力の強化に口実を与える結果となってしまった。

 

1892年3月25日に秘密警察法は成立。

最後に、集会の自由を制限し、政府を批判するような出版物などを禁じていく「検閲」法の制定へと向かっていく。

かつてのサンタ・アナ将軍時代を思い起こさせるような抑圧的な法律の数々によって、ディアス兄弟はその政治基盤は揺るぎないものとなった。

その権力を用いて、彼らは自分達が求める理想としての政治目標――「メキシコの強大化」を目指していく。

 

メキシコの繁栄とその代償

各種法律の改正によって得た権力によって、ディアス兄弟はまずは各種消費税の制定と増税を行い、資金を確保。大量の建設局を用意し、合衆国全体で建設ラッシュを行う。

余った権力は重要都市の資本家たちへの特権付与に用い、彼らを懐柔していった。

いつ反政府的な思想に染まってもおかしくない知識人たちの巣窟となる公務員の給与は大幅に削減し、これも財源の一つとした。一方で軍隊への賃金は最高額にまで高め、いざというときに政権を守る盾として優遇した。


ディアス兄弟はさらに商業化農業の法律を制定し、農業分野に対しても資本家たちの積極的な投資を促していくこととなった。

新バージョンで追加された法律の1つ。農業における「公開企業」方式をアンロックする法律だが、この法律を解禁する「投資信託」技術ですでにアンロックされているためそこまで意味を感じることは正直なかった。

 

これらのディアス兄弟の政策により、メキシコは確かに強大化した。今やGDPランキングでは清を除けば実質的に英仏に次ぐ3位の位置に君臨している。

だが、その背景にある極端なまでの資本家偏重の帰結として、貧富の差が拡大。

さらにディアス兄弟は海外からの投資も積極的に受け入れたことにより、とくに関税同盟を結ぶロシアの資本家がメキシコの農民の土地を支配していくというような事態が進展。

当然これらの状況に対する反発は度々武力行使を伴って発生するが、利権を得た外国の私兵も用いながら直ちに鎮圧されていく。

事実、メキシコにはすでに220万人の「アメリカ人」と200万人のロシア人とが入り込んでいる。ディアス政権は彼らに永住権や参政権などを非常に簡単な手続きだけで与えていく方針を取っていたため、メキシコの人口は確かに増えはしたが、それはすなわち「外国人」による支配の進行をも意味していた。

 

メキシコは確かに繁栄した。
首都メキシコシティ1903年時点で周辺都市含め500万人もの人口を抱え、国内には電気鉄道が張り巡らされ、メキシコで作られる高級衣類やコーヒー豆は世界中の市場で高い評価を得られている。

だが、このディアス政権による「歪み」は、着実に、この国の奥深くに刻まれていく。

それは彼らの独裁体制が始まってから10年以上が経過したとき、それはついに修復しきれないほどの亀裂を生じさせていた。

 

その亀裂は、やがて「人民の声」となって、独裁者に襲い掛かることとなるだろう。



次回、「革命と改革のメヒコ100年史」最終回。

最後の革命」へと、続く。

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