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【CK3】異聞戦国伝・参 手取川の戦い編(1564-1571)

 

1560年。臼木ヶ峰の戦い。柴田勝家が今川義元を討ち取る。

1562年。稲葉山城合戦。疫病の流行で柴田勝家や前田利家を喪うも、同じく斎藤義龍も病死したことで美濃はすべて織田家のものとなる。

1563年。愛知川の戦い。北近江の浅井家に攻め込んだ足利・三好連合軍は、織田・浅井連合軍と、近江国愛知川の地で激突。双方に多大な被害をもたらしながらも、天才・竹中重治の策もあり、最終的には織田浅井軍の勝利に終わる。

この勝利で天下にその名を轟かすこととなった織田上総介信長は、大大名としての地位と名誉を確立することとなった。

その勢いのまま彼は、新たな権益の獲得が為、北陸の朝倉へと勝負を挑むことに。

 

だが、その先には、恐るべき存在が待ち構えていたことを、このときの信長はまだ、知る由もなかったのである――。

 

 

目次

 

※ゲーム上の兵数を10倍にした数を物語上の兵数として表記しております(より史実に近づけるため)。

 

Ver.1.12.5(Scythe)

Shogunate Ver.0.8.5.6(雲隠)

使用DLC

  • The Northern Lords
  • The Royal Court
  • The Fate of Iberia
  • Firends and Foes
  • Tours and Tournaments
  • Wards and Wardens
  • Legacy of Perisia
  • Legends of the Dead

使用MOD

 

前回はこちらから

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手取川の戦い

1564年10月4日。

美濃尾張2ヶ国の大大名となった信長は、次なる標的として越前加賀の大名朝倉左兵衛督義景に対して宣戦布告。

大義名分は先の足利・三好による浅井家への侵攻作戦において、朝倉も北方より仕掛けようとしていたことへの報復。

その実態は、京との繋がりも深く、京・北陸・そして大陸とを結ぶ一大物流拠点であった敦賀・越前の地を手中に収めることで、他地域にはない莫大な経済的利権を我が物にしようとする野望の現れであった。

1565年5月には、朝倉氏本拠の一乗谷を陥落させ、義景の跡取り息子らを捕らえる。

7月には一乗谷から逃亡していた朝倉軍主力を丹生郡の山中で壊滅させる。

これで戦意を失った朝倉義景は間も無く降伏。

越前、そして彼らが一向衆から奪い取った加賀の地の全てを、信長はその領国に収めることとなったのである。

 

だが――。

 

 

「上杉軍、だと?」

織田軍北陸討伐軍総大将佐々内蔵助成政は側近の報告を受け、先の丹生の戦いで受けた傷がうずくのを感じた。
「ええ。どうやら彼らもまた、朝倉に対して侵攻を企てていたようで、現在は加賀国最北端の尾山城の包囲を行っているようです」

「朝倉はもう、我々が潰した。もはや加賀の地は我々織田の領域だ。即刻立ち去るよう、申し伝えよ」

「それが・・・何度もそのような形で伝えているにも関わらず、彼らは一向に退く気配を見せず・・・逆にこのような書状が届けられているほどです」

そう言って側近が成政に手渡した書状を開くと、そこには次のように書かれていた。

加賀は一向衆の手に帰すべき処。侵略者は直ちに踵を返し、この地より去るべし。それこそが義たらん

「――奴らは、尾山城を陥とした後は、そのまま南下してくると思うか?」

肩を震わせながら訊ねる成政に、側近はおそらくは、と答えを返す。

「・・・越前加賀各地に展開している軍勢をすべてここに集結させよ」

「迎え撃つつもりですか?」

成政の言葉に、彼の寄騎として参陣していた木下藤吉郎秀吉が驚きと共に口を挟む。

「確かに兵を集めれば、数の上では奴らに勝ることはできるでしょう。しかし相手はかの軍神――上杉公。あの武田や北条と渡り合って尚勝ち続けているこの日ノ本で最も強い男と称される存在ですぞ」

「分かっておる」

成政は苛立ちと共に、手の中の書状を机の上に叩きつけた。

「だからと言って尻尾を巻いて逃げろとほざくか? そんなことをすれば、上様の御機嫌を損ね、下手をすれば打首となる。迎え撃つしかないのだ」

成政の気持ちは秀吉にもよく理解できた。今はまだ、秀吉は所領も与えられていない一介の武将に過ぎぬが、成政のような高い地位にいる者が抱えている重圧は、秀吉のそれとは比べ物にならないであろう。

成政もまた、上杉を恐れていることにも変わりない。しかし、もしかしたらそれ以上に彼は、織田信長という存在を恐れているのかもしれない。

「――分かりました」

秀吉は決心を固め、成政を見据える。

「手前は早馬と共に岐阜に戻ります。そこで上様や竹中殿の策を貰い受けましょう。寄騎たちは残しておきます故、使ってくだせい」

「陣を離れるつもりか? 軍規違反であり、貴公の首が飛ぶやもしれんぞ?」

成政の言葉に、秀吉はニカッと笑う。

「佐々殿のような武勇を持たぬ小人の身においてできる奉公は限られております。もし首を刎ねられても、佐々殿の身代わりになったと思えば報われるというもの」

快活に笑う秀吉の姿を見て、成政も少しだけ、緊張が解れたような思いを感じ始めていた。

秀吉は最後に真面目な顔つきとなり、成政に言葉を残した。

「佐々殿、どうかご武運を――そしてなお、万が一のときには、どうかそのお命を優先することをお心がけくださいませ。

 所詮、鼠の戯言では御座いますが、案外そういうしぶとい鼠が、最後には天下を獲ることもあり得る故」

 

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1565年12月。

尾山城を陥落させた上杉軍はそのまま迷いなく兵を南下させ、今度は石川郡に位置する野々市城の包囲に取り掛かり始めた。対する佐々成政軍も、織田軍全軍と浅井の援軍も集め、総勢2万7千弱の兵を集めることに成功した。

これ以上、上杉の好きにさせるわけにはいかない。彼らによって落とされた尾山城における惨状は伝え聞いており、目の前の野々市城も放置してしまえば、たとえ最終的に彼ら上杉軍を追い払えたとしても、残された加賀の地の統治は難しくなることだろう。

成政は覚悟を決めた。

そして1565年12月17日。

いよいよ成政軍は、手取川を越え、野々市城を包囲する上杉軍に対し、強襲を仕掛けたのである――。

それは、圧倒的・一方的な虐殺であった。

数的有利を覆された、というだけではない。

「軍神」と称される輝虎を中心とした上杉軍の誇る猛将たちは、一人一人がそれこそ鬼の如き勢いにて、織田軍の数倍の兵を屠り、討ち倒していったのだ。

結果は惨憺たるものとなり、折悪く降り始めた豪雨の中、手取川を引き返していく兵たちの中にはさらなる追撃で討ち取られるものや、上杉軍の捕虜となってしまう者たちまで現れることとなった。

 

それでも、成政は生き永らえていた。

そして彼は、生き恥を晒すことも厭わず、わずかな手勢を引き連れて岐阜への帰路に就こうとしていた。

 

そんな成政の前に、彼が見たこともない大軍が姿を現すこととなる。

6万を超える大軍を先頭で率いていたのは総大将・織田上総介信長。彼は成政に気が付くと自ら近づき、そしてその手に肩をかけ、告げた。

「――よく励んだ、内蔵助。後は我々に任せ、身体を休ませるが良い」

平伏する成政の前を、織田軍に続いて横切ったのは、4万の兵を率いる大名軍――即ち、西国の雄・尼子修理大夫晴久の軍勢であった。

(毛利と西国を二分する巨大国の大名が、いかにして――)

驚きのあまり口を開いたままその軍勢を見送っていた成政のもとに、背後から声を掛けるものが一人。

「佐々殿、御無事で何より。ただ、佐々殿が食い止めていたお陰で、何とか致命的な状況に陥る前に、彼らをここに間に合わせることができました」

成政が振り返ると、そこには秀吉の姿。

「――まさか、これは木下殿、貴殿が?」

「いや、拙者はただ鼠が如きちょろちょろと岐阜の周りを走り回っていただけです。骨を折ったのは、我が弟の小一郎。あ奴が西国まで馬を走らせて、見事上様の妹君と尼子殿の若君との婚約同盟を成立させたのです」

「あとは、この軍勢の力を借りて、上杉を打倒すのみです。これだけの兵力差があってようやく、互角と言えそうな状況なのが実に恐ろしいところですが」

そう言うと秀吉はすぐさま兵を引き連れ、先頭の織田軍へと合流するべく駆け出していった。

その後ろ姿を見送りながら、成政は思わず、その背中が遥か巨大なもののように幻視することとなった。

木下藤吉郎秀吉――その、自らを鼠や小人と卑下しながらも、誰よりもよく働き、よく走り、そして多くの人を巻き込んで世の流れを変えていく、そんな成政が今まで出会ったことのないような才能の存在を、彼はようやく理解することができたのである。

 

時代が、変わりつつあるというのか。

成政はそう、誰に聞かせるでもなく呟いた。

 

 

天下への道

1566年3月12日。

手取川上流に位置する鳥越城を包囲していた上杉軍に、織田・浅井・尼子連合軍6万が激突。

圧倒的優勢にも関わらず、上杉軍の抵抗は激しく、織田浅井尼子連合軍の兵も次々と倒れていく。

それでもあまりにも多勢に無勢。

最終的には頑強に抵抗し続けてきた上杉軍もついに壊滅。

景虎を逃がすべく殿を務めた母方の叔父・景信も討ち取られるなど、上杉軍の被害は甚大なものとなった。

それでも暫くは降伏を認めることなく、更なる兵を出して抵抗しようと試みていた上杉軍だったが、織田浅井尼子連合軍は容赦なく能登・越中の諸城を攻め立て、これを降伏開城させていく。

ついには1567年6月30日。朝倉攻めの開始から3年。上杉との対決が始まってから1年半の時が経過してようやく、織田は一息吐く講和を結ぶことができるようになった。

 

しかしその直後、更なる混乱が織田同盟国内にて巻き起こる。

 

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1567年7月26日。

上杉との戦いが終結してからわずか1ヶ月。

まだ落ち着きを取り戻しきれていない岐阜城の信長のもとに、その報せは届けられた。

 

「――武田が三河への侵攻を開始した、と」

信長の言葉に、一番家老の丹羽長秀は頷く。

「我々としても同盟国への攻撃について申し立てを行いましたが、返ってきたのは逆に助力を請う丁寧な書状のみ」

「もちろん三河からの救援要請もひっきりなしに届いております」

いかが致しますか、という言葉を長秀は飲み込んだ。信長が鬼のような形相で、手に取った信玄からの書状を睨みつけていたからだ。

暫しの間、その広間には沈黙が漂い続けていた。二番家老の林通政も、普段は歯に衣着せぬ物言いすら許されている参謀の竹中重治でさえも、何も言葉を発することができぬまま、ただ主君の決断を待ち続けていた。

「――挑発のつもりか、信玄坊主め」

信長は書状を秀長に突き返した上で立ち上がる。

「以前、伝えた通りだ。武田とは戦らん」

それだけ言い残し、座敷を退出する信長。

残された家臣たちも互いに目を見合わせるばかりで、何一つ言葉は生まれなかった。

方針は定められた。あとはその通りに事を運ぶだけだ。

 

かくして1567年から始まった武田による三河・松平家侵攻作戦は、翌年末には家康の敗北という形で終結する。

その間に織田家は伊勢に侵攻し、これを制圧。

北近江の浅井家も正式に織田家に臣従することも認め、その領域は北は北陸から南は熊野に至るまで、連続して連なる畿内随一の領域に拡大することとなった。

近江・伊勢の獲得により、一大鉄砲産地や豊かな貿易港をも支配下に置くことに成功した。



もはや誰もが、織田信長という男の存在を認めつつあった。

彼はすでに、「天下」を手中に収めるだけの実力と資格を持ち得る人物であった。

あとは、そのきっかけさえあれば――。

 

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1570年5月10日。

将軍・足利義輝の筆頭家臣であった三好修理大夫長慶が、突如として義輝に反旗を翻し、挙兵。

三好軍はただちに京に攻め上り、翌年1月にはこれを制圧。

義輝は京都から追放され、ここに、240年間続いた室町幕府もその歴史を閉じることとなったのである。

新たな「天下人」の座は、三好の手に。

そしてそれは、同時に織田信長という男による「天下獲り」に向けた、最大のきっかけとなるのである。

 

 

次回、第肆話。

京都炎上」編へと続く。

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