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【CK3】異聞戦国伝・壱 美濃攻略編(1560-1562)

 

1560年8月15日。

三河国加茂郡の山中にて、織田攻めのため滞在していた今川軍本隊2万7千が、柴田勝家を総大将とする織田軍1万7千によって奇襲を受ける。

織田軍は勇将・滝川一益が討ち取られるなど大きな被害を出すも、勝家の手によって敵総大将今川義元の首を獲るなどの大戦果を挙げ、今川方は総崩れ。

 

これが世に言う臼木ヶ峰の戦い

戦国最大の英雄・織田信長の「新しい物語」が、ここから始まる。

 

目次

 

※ゲーム上の兵数を10倍にした数を物語上の兵数として表記しております(より史実に近づけるため)。

 

Ver.1.12.5(Scythe)

Shogunate Ver.0.8.5.6(雲隠)

使用DLC

  • The Northern Lords
  • The Royal Court
  • The Fate of Iberia
  • Firends and Foes
  • Tours and Tournaments
  • Wards and Wardens
  • Legacy of Perisia
  • Legends of the Dead

使用MOD

 

第二話以降はこちらから

【CK3】異聞戦国伝・弐 天下布武編(1562-1564) - リストリー・ノーツ

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出陣

1560年12月。臼木ヶ峰の戦いから4ヶ月。

今川国境の砦の安定化も終え、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった清洲城の信長のもとに、第一家老の林秀貞がその報せをもってやってきた。

「殿の見立て通り、美濃国内で混乱が生じているようです」

「父の斎藤道三を殺め、その政権を簒奪した美濃国主・斎藤義龍ですが、その暴政に反発する者たちにより、早速内紛が巻き起こっているとのこと」

「ならば、すぐにでも攻めるべきですな」

秀貞のその報告に、織田家中最強の武人にして先の臼木ヶ峰の戦いでの第一功労者たる柴田勝家が、血気盛んに言い放つ。

「殿が以前より仰られていた、畿内への進出における重要な通り道たる美濃の地。ここを平定せねば、この先の殿の野望を果たすこともできませぬ。

 殿、準備は万端で御座います。どうか、出陣の許可を」

勝家の言葉に、信長は静かに二人を見据えたのちに、静かに口を開いた。

「――相分かった。しかし権六、油断するでないぞ。臼木ヶ峰のような捨て身の戦い方は、それしか道がないときにのみ行うことが許される無謀の策だ。拙速の勝利を求めるよりも、慎重を期した敗走の方が望ましいときもあること、ゆめゆめ忘れるな」

「は!」信長の言葉に、勝家は威勢よく応える。

そして2ヶ月後の1561年2月2日、織田軍は北の美濃国に向け、その領土の全併合を求めて宣戦布告を行う。

柴田勝家を総大将とする織田軍2万はただちに、内乱にて主力が不在となっている稲葉山城を包囲。

 

のちに地獄と化すこととなる運命の「稲葉山城合戦」が幕を開けることとなる。

 

 

稲葉山城合戦

1561年夏。

織田家による美濃侵攻、そして両国国境沿いに位置する斎藤家本拠・稲葉山城包囲から約半年。

包囲は順調に進んでおり、城内の限られた兵たちも糧食は尽きかけ、脱走兵も枚挙に暇がなく、陥落ももはや時間の問題であった。

 

しかし、この織田家の優勢に水を差す出来事が発生する。

 

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「疫病、だと?」

本拠地の清洲城にて戦況の報告をうけていた信長の言葉に、医師の沢彦宗恩は深刻な顔で頷く。

「多汗症と名付けられたその疫病は、美濃国本巣郡より広がり始め、同地の北方城を包囲していた森可成殿もこの病に倒れ満足に動けぬ状況となっているようです」

「疫病は間も無く、柴田殿らが包囲する稲葉山城にも広がることでしょう。そうなってからでは、より致命的なことになります」

沢彦の言葉の意味を、信長は十分に理解していた。

故に彼はすぐさま稲葉山城へと遣いを出す。

「権六に直ちに包囲を解き撤退するよう伝えよ。これは助言ではない、命令であると」

 

だが、信長のその「命令」は、適切に彼に伝わることはなかった。

間も無く城を落とせると踏んでいた勝家は暫し待て、と取り合わず、尚も食い下がろうとした急使も、勝家の威圧感と鬼のような形相を前にして言葉を飲み込まざるを得なかったのである。

結果、稲葉山城は確かに陥落した。

しかしそのときにはもう、城全体とその周囲にも疫病は広がっており、勝家もまたこれに感染したと思わしき高熱や下痢の症状を見せ始めていた。

その報告を受けた信長は、表情を変えずにその指示を下した。

「愚かなり、権六よ。

 ――森隊、柴田隊の全軍を、現地に留め置かせること。誰一人、尾張の地を踏ませることは許さぬ。

 これに違反するものは、誰であろうとも容赦はせぬ」

その言葉が嘘でないことは、何よりも家内で重要な存在たる柴田を「見捨てる」選択肢を取ったことからも明らかであった。

やがて、美濃に取り残される形となった可成、勝家は共に病没。

さらに従軍していた河尻秀隆や信長の兄弟たち、さらには前田利家さえも、同様の結末を迎えることとなる。

信長は沢彦に命じ、尾張国内は徹底した国境封鎖を施し、これ以上の災厄の拡大を防ぐことに力を尽くした。

それでもこれを完全に防ぐことはできず、重臣の林秀貞に母の土田御前、妹の、さらには信長のまだ幼き嫡男たる奇妙丸への感染さえも確認された。

しかし、信長はその息子にさえも容赦はなかった。彼は相も変わらず顔色一つ変えず、奇妙丸の隔離を断行し、その死に目にさえも会うことなく徹底したという。

この姿勢に、織田家中に彼を悪様に語る者はいなかったと言う。

ただただ、その目的がために私心を殺し、公正に突き進むことに迷いのないその姿勢に、遺された家臣らは忠誠の色を濃くし、より一層の結束が実現したのである。

 

とは言え、状況は決して明るいものではなかった。1562年の春には疫病も落ち着きを取り戻しつつあったが、同じく勢いを取り戻した斎藤軍が一度は落とされた稲葉山城を再包囲。

生き残った織田の守備隊に抵抗する術など残っていないのはもちろん、織田軍もすでに柴田勝家を始めとした優秀な指揮官と多くの兵を喪っており、この斎藤軍を押し返す方法は見出し得なかった。

実際、勝家や利家の不在はゲーム的にもかなり苦しく、数的優位であっても敗北予想が出るなど、手の出しようがなかった。

 

このままでは、良くて白紙和平。

織田家一同、そう心を決めかけていたそのとき。

驚くべき報せが、信長のもとへと届けられることとなった。

 

 

結末

1562年5月4日。

息も絶え絶えの早馬が、偵察に出ていた稲葉山から北方城の織田本陣へと届けられた。その報せに目を通したのち、信長は珍しく口元を緩め、言い放った。

「悪郎義龍、くたばりおったわ」

それを聞いた供回りたちは諸手を挙げて歓声を挙げたという。すでに、斎藤義龍もまた、同じ疫病に罹っていたという噂は広まっていた。それでも最前線に彼が出陣していると言う確かな情報もあり正否を判断しかねていたが、結果としてそれは事実を押し隠すための「愚策」であったというわけだ。

ただでさえ道三死後の混乱に沈んでいた斎藤家。新たな当主である義龍嫡男の龍興もまだ幼少でどうしようもなく、竹中重元稲葉良通などの斎藤家重臣たちが次々に織田に臣従。

1562年5月4日。

斎藤龍興とその側近たちは抵抗の術なしと判断し、信長への完全降伏を選択した。

かくして、信長は尾張美濃の二カ国を領有する大名としてその名を上げることとなったのである。

「――何とか成し遂げましたな。支払った犠牲は、余りにも大きなものでしたが」

病没した林秀貞に代わり、信長の一番家老として地位を上げた丹羽長秀の言葉に、信長は無表情のまま応える。

「犠牲など、支払われるべきものが支払われるに過ぎぬ。そこに、惜しむべきものは何一つない」

「修羅の如き、ですな」

主君の覚悟の程に触れ、戦慄する様子を見せる長秀。信長はそんな長秀を見やりつつ、フ、と笑みを浮かべた。

「我がこれより進む道は常人のものならず。あらゆる大凡人おおよそびとの幸も不幸も、その大義の前では無意味に等しい。

 おれはこれを受け入れる覚悟は既に出来ている。それを修羅と呼ぶのならば、そうなのだろう。例え何度この世が巡り、情況に大小の差異が生じようとも、この信長の覚悟と生き様だけは、変わるつもりはない」

 

ここから、物語は始まる。

私たちの知っている歴史とは少し異なった、しかし大きなその道のりは確かに等しい、その物語が。

 

異聞戦国伝。

織田信長編、是より開帳。

 

 

第弐話「天下布武」編へと続く。

suzutamaki.hatenadiary.jp

 

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