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【CK3】織田信雄の逆襲⑤ 大坂の陣編(1604-1610)

 

織田信長の死以来、統一されることなく分離し続けていた旧織田領。

その最大勢力を担うのは「明智討伐の最大武功者」羽柴秀吉。次いで筆頭家老柴田勝家の一族が担っていたが、そこに「織田家当主」織田信雄が第三勢力として存在感を示しつつあった。

そんな鼎立状態の均衡が崩れたのが1602年末の秀吉の死。

新たに羽柴家当主となった羽柴秀勝の求心力は低く、彼の四国攻めをきっかけに畿内の織田家への「返還」を要求して信雄が挙兵。

これに柴田・上杉も同調したことで、羽柴家の命運は定まったように、思われていた。

だが、そこに掣肘を加えたのが長らく信雄の同盟相手であったはずの徳川家康。

かくして、1604年。織田家内主導権を巡る最後にして最大の戦いが始まる。

 

Ver.1.10.2(Quill)

使用DLC

  • The Northern Lords
  • The Royal Court
  • The Fate of Iberia
  • Firends and Foes
  • Tours and Tournaments
  • Wards and Wardens

使用MOD

  • Japanese Language Mod
  • Shogunate(Japanese version)
  • Nameplates
  • Historical Figure for Shogunate Japanese

 

目次

 

第四話はこちらから

suzutamaki.hatenadiary.jp

 

前哨戦

「羽柴軍は総兵力は5,800を超えており、豊富な数の鉄砲隊も配備されているとのことで単独での衝突は分が悪く思えます」

シアルミナの収集した情報をもとに、寺沢広高が状況を報告する。

「北方から西近江路を経て、佐久間盛政率いる柴田軍が京都入りする予定となっております。我々も淀川を上って北上し、これと合流するのが良いかと」

軍奉行の井伊直政が具体的な戦略を提言する。

「良いだろう」信雄はこれに頷く。「総大将は秀雄、これに井伊隊、真田隊を軸とした部隊を組織し、まずは京都に向かえ。京都では秀勝の弟の羽柴高秀が居する二条城のみを攻め、それ以外は市内での乱暴狼藉含め厳しく取り締まること」

信雄の言葉に一同は頷く。

信雄は陣幕の隅に控えていた本多稲の方に向き直り、声をかける。

「此度は父御とも対峙することになろう。出陣は控えても構わぬぞ」

信雄の言葉に、稲は首を振る。

「既に覚悟は出来ております。今や我が身は織田家の槍であり、一族が為にこの身を捧げましょう」

信雄は満足気に頷く。そして、一同に向けて言い放つ。

「では参るぞ! 織田家の誇りを取り戻すべく、新たな時代を切り拓くべく、我らが敵を粉砕せよ! 掛かれぃ!!!」

信雄の激に呼応し、陣幕中に鬨の声が響き渡った。

 

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7月11日。

淀川を北上した織田軍3,700は京都の街中を整然と行進し、二条城を包囲。待機していた羽柴軍の数は少なく、ろくな抵抗もできぬまま絶望的な籠城戦を開始している。

7月29日。

佐久間盛政率いる柴田軍4,200が織田軍と合流。共に二条城包囲を続ける。

8月9日。

摂津方面から羽柴軍5,800が姿を現し、大坂城を包囲した旨の報せが入る。

「大坂城は世に名高い堅牢の城。暫くは落城することはないでしょうが、少しばかり牽制に伺おうかと思います。三法師殿、二条城包囲はお任せしてもよろしいでしょうか」

井伊直政の言葉に、信雄の嫡子であり此度の総大将でもある織田秀雄は頷く。

「うむ・・・相分かった。兵部殿も無理をなさらぬよう」

「勿論です。我は単なる猛将ではなく、引き際も弁えているつもりです。奴らに捉えられることなく、かつ奴らを翻弄してみせましょう」

攻城戦ボーナスの特性を持つ秀雄と柴田軍に包囲を任せ、井伊の軍勢1,400名だけで大坂へと戻る。

 

8月26日。

淀川を渡り、大坂城を眼前に見据える茨田の地にて陣を張り、大坂城包囲軍を挑発しようとする井伊軍。

しかしそこで、彼らの背後、信楽山地の方面から、徳川軍3,700が近づいてくるとの情報が急遽入る。

「な――全くそんな兆候はなかったじゃねぇか・・・京都内の情報統制はどうなってんだ? 羽柴の仕業か、それとも徳川の旦那の仕業か・・・」

井伊は慌てつつもすぐさま全兵に淀川を戻り退避するよう伝える。

ここで捉えられ、壊滅しては目を当てられぬ!

なんとか全軍無事淀川を渡り、大河を挟んで向かい合う井伊軍と羽柴・徳川連合軍。

暫くの間膠着状態が続いていたものの、9月4日に敵軍は南下し、大坂城方面へと引き返していく。

「・・・まあ、そうするわな。向かってくれば、命を懸けてでも奴らを全滅させるつもりだったが、まあ良い」

いずれにせよ、時間稼ぎという本来の目的は十分に果たせた。

井伊軍はそのまま近隣の高槻城を包囲しつつ、引き続き大坂城方面に睨みを効かせる役回りを担うこととなった。

 

そして11月21日。羽柴高秀は降伏し、二条城がついに開城。

ただちに秀雄・柴田連合軍は南下し、井伊軍との合流を図る。

12月12日。秀雄たちが合流し、高槻城も陥落。さらに上杉軍も近づきつつあるとの報告を受ける。

大坂城方面では、羽柴軍が引き続きこれを包囲しつつも、徳川軍はその周辺の中嶋城(堀城)・高屋城を陥落させた上で、続けて堺をも包囲・陥落させようとしているようだ。

これ以上もたもたしていれば、周辺の補給路を断たれた上で大坂城を飢え攻めされかねない。

いよいよ、決戦の刻だ!

 

 

大坂の陣

12月18日。

まずは高槻街道より、織田軍先遣隊3,200名で大坂城を包囲する羽柴軍へと奇襲をかける。

大坂城は二重の堀とその外側を囲う巨大な惣堀によって強固に守られており、攻め手の羽柴軍もかなり攻めあぐねている様子。そこに地の利を知り尽くした織田軍が一気に攻めかかるという状況だ。

とは言え、秀勝も、政治の腕は養父秀吉に劣るものの、軍略の腕では負けていない。

有能であれば地位を問わず部下の提言を柔軟に取り入れるその姿勢は、不利な敵地での防衛戦においても十分な効果を発揮する。

奇襲を成功させ、大坂城北西部(天満)に配備された羽柴軍を押し込むことに成功しつつある織田軍。

だが、この方面から攻め込んでくることは敵も分かっていたはずだ。にも関わらず、調子が良すぎる――。

一抹の不安を覚える井伊のもとに、報告が入る。

「市兵衛様の軍が、やや突出している模様」

「高雄殿が? いかん、下げさせろ! これは敵の罠だ!」

織田信雄が次男、織田市兵衛高雄。その軍才は家中でも飛び抜けており、兄・秀雄をも凌ぐ程であったが、まだ余りにも若過ぎた。周りを才能ある名将に囲まれていること、そして妻があの本多忠勝の娘であり、彼女自身も戦場にて勇将として活躍していることもまた、彼の焦りを生み出していた。

「このまま羽柴勢を全て天満川に突き落とさん! 我らが部隊が一番槍を立てるぞ!!」

「――血気盛んなること、喜ばし。だがそれ故にこそ、勿体なし」

天満橋にまで敵を追い詰めていた高雄軍の側面から、突如現れた羽柴軍が強襲する。

開戦前までは確かに存在しなかった橋が、天満と船場との間に架けられていたのだ。

「掛かれッ!」

この側面奇襲部隊を指揮するのは羽柴軍きっての猛将、大谷吉継。統率の取れた動きで、一気に高雄軍に横槍を喰らわせる。

「くっ、おのれ、立て直せ! 撃退せよーー!」

高雄は必死に味方に檄を飛ばし、体勢を立て直そうともがくが、側近の静止を振り切り兵たちの前に出ようとしたところを、飛んできた矢によってその右肩を貫かれてしまう。

「勿体なし。しかし、これぞ乱世の倣い」

そのまま押し込み、これを全滅させようと、大谷は突撃の号令を下そうとした。

その瞬間。

 

――ぱぁぁぁぁん・・・

 

騒然とする戦場の中でも一際、その銃声は鋭く響き渡ったように思われた。

その一撃は、真っ直ぐに馬上の大谷のこめかみを襲い、そのまま大谷は大地へと崩れ落ちた。周りの旗本たちは、これをただ茫然と眺めることしかできなかった。

「――あれだ、あそこから、まさか・・・!」

兵たちが指差す先には、天満川沿いの惣堀に造られた石垣の上。そこに構える、一人の男。

距離はゆうに300mはあろうか。そこからまさか、馬上の指揮官を狙い撃ちにしたというのか――!?

「雑賀・・・孫市」

兵の誰かが呟く。

次の瞬間、同じ石垣の上に無数の鉄砲兵たちが現れ、大谷を失い混乱し足が止まった横槍兵たち目掛けて次々と銃が乱射された。孫市と違いそれは簡単には敵兵に届くものではなかったが、指揮官を失った兵たちの混乱を加速させるには十分だった。

そこに、遅れて駆けつけた織田の本隊が現れる。

「大谷がやられただと!? まずい、ここを崩されるな!」

船場に陣取っていた加藤清正福島正則ら勇将たちが次々と「新たに造られた橋」を渡って天満へと突入。天満の戦いは更なる乱戦へと変貌していく。

軍量では羽柴軍が有利。しかしそこに――。

「儂も混ぜんかッ! この天下分け目の一戦!」

関ヶ鼻の戦いでもその武名を轟かせた佐久間盛政率いる柴田軍が、加藤・福島軍の背後から一気に襲いかかる。

「なっ――、池田隊が背後は守っていたはずだ、もうやられたというのか!?」

驚く福島。そこに軍監が回答する。

「いえ・・・確かにそこにいたはずの池田隊が、忽然と姿を消したそうです」

「な、何――?」

狼狽する福島のもとに、猛烈な勢いで佐久間隊が襲いかかってくる。福島の兵たちもこれを何とか防ぎ切ろうとするが、盛政自ら先陣に立って襲いくる士気の高い軍勢を前にして、児戯のように蹴散らされていく。

「くっ、鬼玄蕃め――ッ!」

福島も前線に立ってこれを迎え撃つも、やがてこれは全潰。福島自身も命までは落とさなかったものの、負傷した上でその身柄を拘束させられた。

「い、いかん・・・」

盟友の部隊の大敗を目にし、加藤清正も敗北を悟りかける。

が、そこに更なる戦況の変化を知らせる急報が飛び交う。

「徳川軍、出来! 船場南部より押し寄せ、神速で攻め上ってきております!」

「――ふん、井伊の若造めが、暴れ回っているようだな」

徳川軍先鋒の指揮を務める榊原康政が馬上で不敵に笑う。

「戦況は決して芳しくはないが、羽柴に賭けた殿の名を汚すわけにはいかぬ。死を恐れず攻め掛けよ!」

両陣営のほぼ全軍がぶつかり合う乱戦に次ぐ乱戦。加藤清正軍を取り囲んでいたはずの柴田軍を今度は徳川軍が取り囲み、その軍勢は一気に織田本隊にまで到達せんとしていた。

「くっ、崩れるな! 持ち堪えよ! 我らが背後には三法師殿がおられるのだぞっ!」

気勢を上げ、兵を鼓舞する井伊直政。その眼前に、徳川軍きっての猛将の姿が現れる。

「小童よ、わが忠誠の、糧とさせてもらうぞ」

奥平信昌。長篠の戦いにおける武功を讃えられ、徳川家慶から名刀大般若長光を授けられし男。織田信長からも偏諱を与えられる程認められていたこの男が、勇壮なる奥三河の騎馬兵を率いて一気に突撃する。

さしもの井伊の赤備えもこれに怯み、井伊自身も乱戦の中で負傷してしまう。

このまま、織田軍総崩れか、という危機的な局面の中で、最後の主役がやってくる。

「上杉軍、参陣致しましたッ!!」

遅れてやってきていた上杉軍が激戦地・天満へと突入する。

「織田! 柴田! 遅れて相済まぬ! 上杉が与力、直江兼続、参る!」

上杉景勝の最側近たる直江兼続が率いる2,400の部隊が徳川軍に攻め込む。その中心にいた榊原康政の部隊はこれに押し込まれていき、今度は直江が榊原を負傷させるなど、形勢は更なる逆転を見せていく。

惣堀からの銃撃もより頻繁になっていき、今度は加藤清正が孫市の攻撃を受けて負傷する。

「掛かれッ!掛かれッ!掛かれッ!」

本多稲も馬上で堂々たる声を上げ、先陣を切って敵将兵のもとへと突撃し、松本城主・小笠原貞慶を討ち取る戦果を上げる。

情勢は確実に、織田・柴田・上杉連合側の優位に進んでいった。

その報告を受けていた後方の徳川家康は、さらなる状況悪化の報を受ける。

「羽柴の村上水軍が、木津川口で織田の九鬼水軍に敗北したとのこと」

「そうか・・・」

家康は観念したように目を閉じる。このままでは、包囲していたつもりが逆に包囲されてしまうことになる。

「全軍に伝えよ。撤退だ。この戦いは我々の敗北だ」

 

戦場に法螺貝の音が響き渡る。次の敵に向けて刀を振りかざそうとしていた男も、火縄銃を頬に貼り付けて片眼で敵を捕え引き金を引こうとしていた男も、皆、その腕を止め、茫然と空を見上げた。

大地に横たわり、頬にあたる冬土の冷たさすらも感じぬほどに意識を失いかけていた敗兵たちも、その意識の片隅にその音を聞き、人知れず涙を流した。

後に残るのは、勝兵たちの勝鬨と、追い討ちをかける馬兵の蹄の音だけ。

徳川の兵、羽柴の兵は、黙々と、それぞれの帰路を一目散に駆け抜けていった。

 

だが、大坂城より北に逃げた羽柴軍残党には、悲劇が待ち受けていた。すでに織田軍によって陥落させられていた高槻城の近辺を通った際に、そこで待ち受けていた上杉景勝の軍が襲い掛かったのである。

この戦いの結果、羽柴軍はほぼ全滅し、総大将の羽柴秀勝も捕えられる。

これにて、対羽柴戦争は決着となる。

秀勝は直ちに降伏を宣言し、信雄の要求通り山城・近江の全領土を織田家に「返還」した。

日ノ本の中心地を獲得したことで、さらに魅力的な各種ボーナスを手に入れられるようになった。

 

東方に逃れた徳川軍は落武者狩りや織田軍の追手により数を減らすも、なんとか命からがら三河まで戻る。

しかし信雄は直ちに兵を再編し、尾張方面へと侵攻を開始。この織田の旧領は次々と旧主君の到来に城門を開け降伏。織田軍は労せずして三河方面を射程に収めることとなった。

そして、三河の家康のもとに、信雄より使者が遣わされる。内容は、講和のための会談の要求であった。

舞台は笠寺。それは、かつて家康が織田家の人質であった頃に、今川家との人質交換の舞台として選ばれた曰く付きの寺であった。

 

 

戦後

1605年7月17日。

笠寺の指定された座敷に入ると、既に家康が座して待ち構えていた。信雄の入室を確認するや否や無言でその首を深く下げ、平伏の意を示す。

信雄はその上座に座り、家康の頭を睨みつける。

「面を上げい」信雄の言葉に、家康はゆっくりとその顔を上げ、信雄を見据える。その顔は以前会ったときと比べても随分と老け込んでいるように見えたが、その眼差しの強さは変わらず、平伏しながらも、ともすれば彼の方が精神的優位に立っているようにすら感じられた。

信雄は肘掛にもたれながら、負けじと睨みつけるようにして家康を見据える。

「――して、弁明はあるか?」

「弁明はござらぬ。偏に、我が不徳の致す所。御身のご要望通り、尾張を御返還させて頂くと共に、仙千代を人質として差し出しましょう」

目を伏せる家康。粛々と語るも、決して腹を召すとも隠居をするとも申し出るつもりはないようだ。

信雄もまた、そこまでを求めるつもりはなかった。ただ、疑問が1つ残っていた。

「――何故、裏切った? 我の誘いに応じ、柴田、上杉と共に羽柴討伐に加われば、このようなことにはならなかったろうに。貴殿の娘をも危険に晒してまで、羽柴に義理建てする必要があったとでも?」

視線を合わせぬまま、沈黙する家康。暫く信雄も何も言わずこれを睨みつけていたが、やがて家康が少しずつ語り始める。

「・・・御身が余りにも恐ろし気なるが故に。これ以上その拡大を許さば、やがて徳川も飲み込まれましょう」

「飲み込まれれば良いではないか。我が父のときのように」

また暫く家康は沈黙するも、やがて面を上げ、信雄に向き直った。

「なりませぬ。・・・我は、待ち申した。唇を噛み、歯を食い縛り、待ちに待ち続けたのですぞ」

その双眸は燃えるようにして光り、信雄を刺し貫いた。信雄も流石に、唾を飲み込む。

「然し、貴殿は敗北した。貴殿にとって、徳川にとって、最も望まぬ結果を招き入れたのだ」

「いえ」

きっぱりと、家康は否定した。

「決してこの道は、過ちでは無いと断言できまする。例えこの首が刎ねられようとも、・・・例え、我が妻子たち、忠臣たちが尽く、その身を焼かれようとも」

「――げに恐ろしき男よな」

信雄は苦笑した。その目はぎらりと、家康を見返した。そこには家康にとっても懐かしき男の光が灯っていた。

「貴様も戦国大名よの。何故貴様が長生きしているのか、理解できん」

「往生際が、悪いものでして」

家康はニヤリと笑った。目の前の男も高らかに笑い始めた。

 

 

かくして、織田・徳川の和睦と相成る。

大反逆にも関わらず家康の首も家族の命も失われることなく、尾張の地の織田への返還と、家康が八男・仙千代を人質として信雄に預けることだけが決められた。

 

 

その後、数年間は平穏が続くも、敗北による羽柴の権威の失墜は、占領地・中国における大規模な反乱を招くこととなる。

近隣の諸国の助けも得られず、抵抗虚しく連敗を重ねることとなる秀勝。

1608年11月に秀勝は降伏し、中国の羽柴領は粉々に砕かれることとなった。

 

これを受け、信雄は秀勝に対し、その領土全てを織田家に返還し、臣従することを要求。

これを秀勝が拒否したことで、織田家5,800の軍勢が、秀勝の籠る加古川城へと迫ることとなった。

加古川城は大坂城にも劣らぬ堅固さを備え、徹底した籠城を図ろうと試みていたが、ここで信雄は新兵器となる「大筒」を用意していた。

南蛮の恐ろしき兵器の破壊力を前にして、加古川城はみるみるうちにその外壁を失っていき、やがて落城は避けられるぬ定めとなっていった。

それでも、秀勝は降伏を認めなかった。彼は自ら城に火をつけ、女房たちを皆自らの手で殺めた上で、最後は長宗我部家から人質として手元に置いていた盛親に介錯される形で、自ら腹を切ることとした。

「我もまた、かの信長の子息ぞ。羽柴の名と共に臣従の道を辿るよりかは、父の如く火焔の中でその身、朽ち果てん」

 

 

「――そうか、於次は逝ったか」

 

報告を聞き、信雄は暫しの間、空を見上げた。

 

「サル、キンカン、権六・・・儂は暫し、長生きし過ぎたのかもしれんな」

 

 

父・秀勝の後を継ぎ羽柴家当主となった秀勝の嫡子・秀親は、間もなく信雄への降伏を宣言。

信長に次ぎ天下統一に最も近いと思われていた羽柴の一族は、再び織田の従属下に置かれる運命となったのである。

 



そして――1610年3月4日。

 

室町天皇より勅使として勧修寺光豊が大坂城に居する織田信雄のもとに遣わされる。

「織田左近衛中将信雄殿、先達ては西国の平定、大儀也。此度は、陛下より宣旨を授かりし候。貴殿を源氏長者、征夷大将軍に任命致す」

 

この瞬間、時代は新たなる局面を迎える。

戦国の世は終わりを告げ、「大坂幕府」による「大坂時代」が始まるのである。



 

――いや、まだ終わりはしない。

むしろ、本当の始まりはここからである。

「逆襲」は果たされた。ここから先は、亡き父・信長の意を継ぎ、果たされなかった幻の天下一統を目指すべきときである。

 

そして、その信雄の野望の前には、まだまだ立ちはだかる壁が存在する。

第六話、「虎狩りの役」編へと続く。

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