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【Vic3/Victoria3】世界で最も豊かで幸福なスイスの作り方④(最終回) 祖国防衛戦争(1896-1936)

 

ナポレオン戦争後、スイスは「調停」時代、「修復」時代、「再生」時代を経て、少しずつ旧来の連邦主義から統一された国家への「改革」を進めていった。

1850年代後半から、その改革を主導したのが元首相ヨーゼフ・フランツ・カール・アムルヒンと、ベルリン出身のフリードリヒ・ルートヴィヒ・フォン・ケラーの二人。

1870年代に入ると、急速な発展に対し労働力が不足する事態に陥るも、自由化を進めた国内の法制度の恩恵を受け、海外からの大量移住も発生。労働力不足の改善が果たされる。

1880年代に入ると民主化も進み、次第に都市労働者を中心に支持を集める社会民主党が躍進。

1883年にはアルベルト・ムンツィンガーが党首を務め、年末の選挙に勝利。大統領に就任する。

その後は改革を拒む勢力による抵抗を一時受けるも、同じ志を持つ同士ポール・サイエと連合。

1891年選挙ではこれら抵抗勢力を駆逐して圧勝。

ついに、その改革の最終段階たる「多文化主義」も制定し、スイスはあらゆる民族・宗教・階級が分け隔てなく幸福となる権利を有する先進国家へと生まれ変わったのである。

しかし、そんなスイスを狙う存在が現れる。

労働者を中心とした世界革命を狙い、大規模な反乱の末に政権を手に入れたフランス・コミューン

理念の拡大を狙う彼らは、次なる目標としてスイスの土地を狙いつつあった。

目の前に迫るこの脅威を前にして、果たしてスイスは独立と自由を守りきれるのか。

 

victoria3 AAR/プレイレポート第20弾「スイス内政」編最終回。

祖国を守るための、最後にして最大の戦いが始まる。

 

 

Ver.1.5.13(Chimarrao)

使用DLC

  • Voice of the People
  • Dawn of Wonder
  • Colossus of the South

使用MOD

  • Japanese Language Advanced Mod
  • Visual Leaders
  • Historical Figures
  • Japanese Namelist Improvement
  • Extra Topbar Info
  • East Asian Namelist Improvement
  • Adding Historical Rulers in 1836
  • Interest Group Name Improvement
  • Western Clothes: Redux
  • Romantic Music
  • Cities: Skylines
  • Beautiful Names
  • ECCHI

 

目次

 

前回はこちらから

suzutamaki.hatenadiary.jp

 

祖国防衛戦争

開戦

「――以上が、現在の状況となります」

スイス連邦大統領アルベルト・ムンツィンガーは、息子で秘書を務めているカスパー・ムンツィンガーの報告を受けて表情を暗くする。

「フランス・コミューン政府による、我が国の外交官の追放、か」

「やはり奴らの目的は我々の領土侵攻というわけだな」

「おそらく、間違いないかと」

カスパーもまた、暗い顔で頷く。

「最初のフランス共産革命の後、幾度かの内部権力闘争を経て、現在その指導者の地位につけるのはエマブル・ネイ・デルシャンジャン。我々と同じ社会主義を奉じるとはいえ、その実態は国内の反対勢力をすべて封殺する専制政治体制を取っており、民族主義と結びついた世界革命――すなわち対外侵略政策は、我々と全く相入れないものとなります」

「その通りだな。これに隷属することは、スイス国民の自由と幸福を完全に失わせることに直結する。絶対に守り切らねばならない。

 奴らが攻め込むまではまだしばらく猶予があるだろう。その間に、準備を進めるぞ」

 

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いよいよ20世紀入ったスイス。すでに本プレイの目的である「世界1位の1人あたりGDPと平均生活水準」は2位以下に大きな差をつけて達成しているが、そんなスイスに対し、隣国のフランス・コミューンが牙を剥こうとしていた。

いつ攻められてもおかしくない。その状況に備えるべく、これまでは自然伝播に任せ続けてきた軍事技術の開発を開始。

1904年10月17日に「塹壕作業」の技術をアンロック。歩兵ユニット「塹壕歩兵」を解禁した。

この世界は技術進捗が遅れており、フランス軍もまだ散開歩兵どまりのため、これで防衛面でのアドバンテージをかなり得られるようになっただろう。

スイス唯一の軍団「スイス国防軍」。「国民民兵」の軍制を採用しているスイス軍では、常備兵は最大で1万人しかいないものの、いざ戦時体制となれば総動員令を発令し、最大で20万人ほどを招集することが可能である。

さらに万全を期すため、ムンツィンガー大統領は西アルプス山脈を挟んで隣接し、共にフランスと国境を接する隣国サルデーニャ王国に特使を派遣。

「哲人王」とも称される、国民人気の高い若き国王とも面会し、共にフランスの脅威に備えるための「西アルプス同盟」の締結を実現させた。

あとは「そのとき」を待つだけ。

そしてそれは、1906年1月にもたらされた。

 

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「――ジョセロン元帥」

「は」

ムンツィンガー大統領に呼ばれ、国防軍最高司令官の任に就く陸軍大臣オーグスト・ジョセロン元帥が背筋を伸ばし返答する。

「総動員令を発令する。直ちにスイス全土から徴兵を行い、国防軍を組織してくれ。

 これは我らの自由と理想を守るための、最後の戦いだ。これを踏みにじろうとする全ての敵を国境で押し留め、我らの街に指一本触れさせるな」

は、と力強く返答し、ジョセロン元帥は部屋を出ていく。

「閣下、ついに始まりましたね」

傍らに控えていたカスパー・ムンツィンガーは緊張した面持ちで呟く。

「我々が成し遂げたこの理想の連邦共和国。しかし、力でもってこれを守り切れなければ、それは所詮は泡沫の夢となります。この理想を真に永遠のものとするために、この戦いと勝利は、避けては通れないものなのでしょうね」

「ああ」

アルベルトは息子の言葉に、頷く。

「私には軍と、そして命を賭して戦う国民たちを見守ることしかできない。彼らの多くが、戦場で命を散らすこととなるだろうが、私はそれを自らの責任のもとで受け止めなければならない。長い、戦いとなるだろうな」

 

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「――諸君。いよいよ、戦いが始まる。ナポレオン戦争以来、我々は100年に及ぶ平和を享受してきた。しかしいよいよ、我らが血と命をもって、我らの祖国と理想を守るための戦いに立たねばならない」

兵たちの前に立ち、ジョセロン元帥が激しく鼓舞する。

「フランス・コミューン軍はセネガル植民地軍と合わせ総勢26万。対する我々は同盟国サルデーニャ王国軍と合わせても13万に過ぎず、数的には圧倒的劣勢に立たされている」

「しかし勝機がないわけではない。つい先日、スペインにて共産主義者による大規模な内乱が勃発し、フランス・コミューン政府はそちらへの介入も決めた」

「さらにアフリカ方面での先住民反乱も勃発していると聞いており、フランス・コミューンは世界全体で3つの戦いを同時に演じる必要がある状況となっている」

「よって、スイス・フランス戦線においては、兵力差は13万vs15万と、劣勢ではあるもののその差は決して大きくはない」

「さらに現在も徴兵と訓練を続けているところであり、時間が経つにつれ、我が軍はより精強となっていくだろう。あとはそれまでしっかりと耐え抜くのみだ。

 そのために、大統領閣下の許可を得て、『追加物資』や『酒類の補給』そして『応急手当』も許可頂いた。国家の経済面においても全てをこの戦争に費やしてくれることを閣下は認めており、我々はその信頼に応えねばならない」

「キヨー中将」

「は」

元帥に呼ばれ、ひときわ背の高い将軍が前に出る。

「貴殿には西部戦線の司令官を担ってもらう。全兵力をかけ、何が何でも敵軍を国境線に押し留めるのだ」

「承知いたしました。必ずや任を果たしましょう」

キヨー中将の言葉に満足気に頷き、元帥は続いて若い指揮官に声をかける。

「デルア准将」

「は」

返答した将軍の目は真っ直ぐに元帥に向けられ、強い意志を放っていた。

「貴殿が我が軍においても最も防衛戦術に長けている者と聞いている。貴殿にはへグリン少将と共に中央地域の防衛の任に就いてくれ。もしも連邦内部に敵軍が侵入してきた際には、あらゆるコストを気にすることなく、全力の防衛でもって敵軍を押し返すのだ」

「防衛戦略家」特性で解禁される特別戦闘命令。防衛戦略家と測量士特性で合計+20%。この強固防衛でさらに+15%、合計で防御値に+35%されまさに鉄壁となる。

 

高い緊張感が、作成司令室の中を包み込んでいた。実際、この場にいる誰もが、実戦は殆ど初めてであった。そして、彼ら常備軍の何倍もの数の徴収兵たちを、纏め上げねばならない。

最初にフランスが敵対的な姿勢を見せてからの5年間、徹底した訓練こそ続けてはきたものの、それは彼らの緊張の助けには一切なりえなかった。何しろ、この戦争に失敗は許されない。失敗はすなわち、祖国の喪失になるのだから。

 

「――よし、全軍、配置につけ。

 我々はその全てを費やし、この戦いに勝利するのだ。勝利の暁には、我々は皆、20世紀のウィリアム・テルとして、その名が永遠に刻まれることとなるだろう。

 行くぞ、真の独立のための、最終戦争だ――」

 

1906年4月21日。

スイスにとっての運命を賭けた最終戦争「祖国防衛戦争」が幕を開けた。

 

 

1906年の戦い

緒戦はスイス西部、ローザンヌで開幕した。

国境線の死守を命じられたフランセス・キヨー中将が徹底した防衛線を引き、塹壕戦の末にこれを撃退した。

北イタリア方面でも戦闘が繰り広げられており、サヴォイではサルデーニャ王国軍のエルネスト・ボイル・ディ・プティフィーガリ准将が数的には互角のフランス軍12万を見事押し返している。

とりあえずは開幕は順調・・・と思っていた司令部に、緊迫した報告が届けられた。

「スイス北東部のザンクト・ガレンへ敵軍が侵入! 現地に駐留していたサルデーニャ王国軍のルカ・デ・マルキ准将が5千の兵を率いて防戦に出たものの、劣勢に立たされております!」

「何――」

焦りを見せるジョセロン元帥。

「どうやって『裏口』に? まさか・・・」

「おそらく、そのまさかかと。オーストリア帝国がフランスと手を結び、その軍隊を密かに領内に移動させることに同意したものと」

「くそッ・・・デルア准将の防衛部隊にすぐに知らせろッ! 押し寄せてくる敵軍を、決してベルンに近づけさせるなッ!」

 

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1906年7月。開戦から3か月。オーストリア方面から侵入したフランス軍はザンクト・ガレン、チューリッヒを次々と制圧。

続く攻撃目標として、スイス中央部に位置する重要拠点ルツェルンへと攻撃を仕掛けた。

その地を守るのが、若きデルア准将。下層階級出身で国防軍の中での出世は決して簡単ではなかったものの、その持ち前の革新的な発想力をもとに結果でもって実力を認めさせてきた。

そして初の実戦となる今回こそ、彼の躍進の最も重要な好機であると、理解していた。

フランス軍を率いるのはこちらもまだ若い、アルマン・ラクロワ准将。敵陣の真っ只中に入り込むという、危険と隣り合わせの任務に自ら志願した、勇敢なる男である。

彼は2万超の兵を率い、リギ山を乗り越えながら中央スイス重要拠点のルツェルンの街の攻略に乗り出した。山上を制圧し、榴散弾砲による砲撃を次々と街に向けて浴びせかけていく。

ルツェルンの街は沈黙し、すでに防衛兵はすべて退却したとラクロワ准将は判断。彼は配下の兵たちに山を下りて一気に町を占領するよう指令を出す。

だが、彼らが下山を開始した直後、それまで山中の洞窟や廃墟に身を潜めていたスイス軍が一気に姿を現し、高台からフランス軍に襲い掛かる。

慌てて街に向けて「退却」するフランス軍の前に、今度は街の中から銃をもった兵士たちが現れ、フランス軍にそれを浴びせかける。さらには向かい合う位置にあるピラトゥス山からも大砲による砲撃と兵の突撃が開始され、ラクロワ率いるフランス軍2万はあっという間に3万のスイス軍によって完全包囲されてしまったのだ。

「ただ勝つだけでは意味がない」と、デルア准将は戦闘の推移を眺めながら副官に告げる。

「一人残らず敵を殲滅させる。そうやって、彼らが我々の土地を侵略しようとすることがいかに愚かで無謀で犠牲の大きなものであるかを、知らしめねばならぬのだ」

そうして東の脅威を取り払うことに成功したスイス軍。

その後も東西で押し寄せる敵軍を着実に撃退し、自軍の被害も大きいがそれ以上の犠牲者をフランス軍に出させ、開戦から半年が経つ頃には敵軍の総死傷者数は40万近くにまで達しその戦意を大きく挫き始めていたのである。

「順調だな」

報告を聞き、ムンツィンガー大統領は安堵した様子で呟く。

「何とかこのまま、フランス軍は侵攻を諦めてくれれば良いが・・・」

そこまで言いかけて、ムンツィンガーはジョセロン元帥の表情が浮かない色をしていることに気が付いた。

「何か懸念があるのか? 元帥」

「は――」

元帥は頷き、説明を開始する。

「確かに、現状の戦争状況においては我々が有利に進んではおります。しかし、懸念としてはフランスの動きの半分を引き付けていたスペインでの戦争が、間もなく終わりを迎えようとしていること」

「さアフリカにおける先住民反乱も間もなく鎮圧されるだろうとの報告も受けており、それぞれの戦線で動員されていたフランス軍の『手が空いてしまう』ことが予想されるかと」

「つまり」

理解したムンツィンガーは唾を呑み込む。

「その軍勢がすべてこのスイスに向かってくる可能性があると」

「おそらく」

ジョセロン元帥は神妙な面持ちで頷いた。

「未だ、徴兵し訓練を終えた兵の動員率は50%程度に留まっており、フランス軍との数的優位を覆せるような状況にありません。また財政的にも赤字が膨らんでおり、長期戦にかけるほどの余裕もございません」

ジョセロン元帥は真っ直ぐとムンツィンガー大統領に向き直る。

「ここからが正念場です――より多くの血がスイスに流れることとなるでしょうが、我々はこの命に代えてでも、閣下の理想とこの国の国民の希望を守り通して見せます」

元帥の言葉に、ムンツィンガーもただ頷くしかできなかった。あとは彼らを信頼するだけである。

 

1907年の戦い

年が明け1907年の1月25日。

司令部に、アフリカ戦線における先住民反乱が鎮圧されたとの報告が届けられる。

さらに2月に入るとスペインでの戦争も終結。

ジョセロン元帥の予想通り、それらの戦線に派遣されていたフランス軍がスイス国境に押し寄せてきており、この地域でのフランス軍の総数が30万に膨れ上がる。

南仏プロヴァンス方面でもサルデーニャ王国軍が劣勢に立たされており、東スイス国境を守るクール戦線においてもスイス軍は苦戦を強いられている。

とにかく、物量の差がここに来て大きい。幾度となく防衛しても、次から次へと敵は部隊を送り込んできており、上記クールの戦いのように僅かな兵で防戦を行わなければならない場面も連続。

結果として敗北はかさみ、2月中旬には東スイスの占領率が半分を超えるほどとなっていた。

そして3月3日。

司令部に衝撃的な報せが届けられる。

すなわち、同盟国として参戦してくれていたサルデーニャ王国が降伏を宣言したということ。

「彼らを攻めるわけにはいかない。むしろ、ここまで自国の犠牲を厭わず、よく支援してくれていた・・・」

「しかし・・・!」

ムンツィンガー大統領の言葉に、カスパーは悔しそうに首を振る。とは言え、それで何か変わるわけではない。

「あとは戦場の将兵たちを信じよう。我々も、できる限りの支援を行い、国家を守り切るのだ」

支援物資を最高水準の「豪華物資」に。さらに軍隊の給与も最高水準にし、これらを賄うべく課税も最大水準にする。人的資源のみならず、経済の全ても総力戦体制へと移行する。ここからが本当の正念場である。


3月24日。

ついにルツェルンも陥落し、東スイス州はその全域を敵軍の支配下に置かれることとなった。

フランス軍は占領下ルツェルンからピラトゥス山を越えてスイスの首都ベルンへとついに侵入する。

「――総員、今こそ我々はその全てを費やすべき時である。

 ここでの死は、我らがこの栄光なる国家を永遠のものとし、我々の未来に生きるすべてのスイス国民の幸福の糧となることを意味する。

 総員、死を恐れるなッ! 命を賭して、ここで最後の抵抗を見せるのだッ!!」

「――司令ッ! へグリン少将は何とかベルンを守り切りましたッ! 追撃し、そのまま奪われた土地の一部の奪還にも成功しております!」

「――うむ。よくやった、へグリン・・・。

 諸君、まだまだ我らは敗北には至らぬ。むしろ、戦線が限定されたことで、これまでのようにこちらの兵が分散されることなく、効果的に防衛を行うことができる*1

 あとは時間との戦いだ。こちらの徴兵数は着実に増してきており、さらにはフランスも国内が不安定化していると聞く」

「耐え続ければ必ず、奴らが折れる瞬間がやってくる。あともう少しだ!」

 

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「准将。アルプスを越え敵軍が侵入を試みております」

「――敵は3万。こちらの兵は4千。防ぎきることは、難しいな」

副官の報告に、落ち着いた様子で告げるデルア准将。

「それでは、撤退を最優先にしますか。ベルンを最終防衛線とし――」

「いや、先のベルンでの市街地戦で、多くの建物も倒壊し、民間人の犠牲も出ている。これ以上、国民を苦しめるのは望ましくない」

「では、玉砕覚悟で死守致しますか」

「いや・・・」

デルア准将は苦笑する。

「へグリン少将ならばそうしたかもしれんが、私はあまり好みではない。

 最終的にはお前の言った通り撤退せざるを得んとは思う。だが、ただでは退かん。一人でも多くのフランス兵の屍をこのアルプスの山中に積み上げてみせよう。そうすることで、我らの勝利は眼前に迫ってくるのだから。

 抵抗するぞ。最後まで。塹壕を掘れ。そして罠を仕掛けるのだ。一歩一歩、ベルンに近づくにつれ、奴らが地獄を見られるようにな」


「司令。デルア准将は敗走し、ベルンへと退却してきております。ただ敵軍も多くが戦意を喪失し、進軍を停止。他戦線での敵軍の動きも止まっており、膠着状態へと移行しました」

「そうか・・・デルア准将もよくやった。

 そして、こちらも大統領府から速報が届いている。

 ――諸君、我らの勝利だ。フランス・コミューン政府から『白紙和平』の提案が届けられた」


1907年9月1日。

1年半に及ぶ「祖国防衛戦争」は、双方の要求を取り下げる「白紙和平」の形での終結を迎えた。

しかし明らかにこれは、侵略戦争を受けたスイス側の実質的な「勝利」であった。

 

 

エピローグ

戦後もしばらくは、スイスにとって苦難の時代となっていた。

戦前においては最大の貿易相手国でもあったフランスが戦後も継続して「禁輸」を続けていたことで、特に自給生産のできない「硫黄」資源が致命的に不足。

絹を自給する合成プラントや各種鉱山生産の為に必要な爆薬を生産する爆薬工場、さらには肥料工場などが軒並み生産を縮小せざるを得なくなっており、経済発展にも大きな悪影響をもたらしつつあった。

だがこの危機も、1915年にフランス国内で再び革命が勃発。専制政治と対外侵略、そしてこれに反対する国民に対する過激な抑圧を続けていた前衛国家政府に対し、資本家と知識人たちが中心となった急進派反乱軍が決起。

この革命は1916年に達成され、フランスは新たに資本家出身の議長フェリシアン・ジェルジェを代表とした、「ファランステール」なる新たな政体での再出発となった。

この新生フランスがいかなる運命を辿るにせよ、スイスにとって重要なのは、彼らが革命後すぐさまスイスに対して関係の改善を提案してきてくれたことだ。

ここにおいて、スイスはついに、真の平和を手に入れることとなった。

 

そして、このスイスの未来を見届けたかのようにして、1917年7月15日、アルベルト・ムンツィンガーは72年の生涯を終えた。

その後は「コーポラティスト」の小ブルジョワ指導者バルテレミー・シャルバズが、民族主義政党「国民戦線」を形成。1919年選挙では社会民主党を打ち破り第一統へとのし上がった。

社会民主党政権時代に拡充されていた労働者の権利の縮小を唱えた他、これまでの多文化主義的政策の急速な方向転換を志向するなど、政治の変革がもたらされようとしていた。

一方、祖国防衛戦争で活躍した英雄ニコラス・デルアが1923年に政界入り。ムンツィンガーの後継者として党首になったものの選挙で惨敗したバルバラ・ズルツベルガーを押しのけて、新たな党首として就任。

先鋭化した社会主義「前衛主義者」たるデルア将軍は社会民主党を再編し「スイス共産党」を結成。

再び労働者たちの権利を守るための運動を展開し、支持を再獲得。

1927年の選挙では国民戦線を打ち破り、政権を奪取することに成功した。

だがこの政権もまた、権力の独占や経済の自由からの後退など、かつてアムルヒンやムンツィンガーが夢見ていた理想のスイスとはかけ離れた未来像を形作ろうとしていたのである。

 

1930年代へと入っていくスイス。

その未来は、必ずしも明るいものだけではないだろう。

それでも、その混沌と不安の中に、一筋の光はある。

スイスの自由と、民主主義とを守る、その光が。

 

 

それでは最後に、1936年のスイスを見ていこう。

 

 

まずはGDP。実は最後の最後で、「一人当たりGDP」では急成長してきたオーストラリアに抜かれ、2位に甘んじることとなってしまった。一人当たりGDPの額自体は20年前と比べても1.5倍近くに成長していたりと確かな成長を見せていたのだが、オーストラリアの急成長ぶりが凄まじかった。

そのオーストラリアはこの世界ではなぜかベルギーの自治領となっており、ニューギニア島の一部やニュージーランドまですべて領有していた。

スイスの同盟国サルデーニャ王国がそのまま統一して成立したイタリア王国の関税同盟下にも入っており、独自の繁栄を遂げているようだ。

 

生活水準では問題なく1位。しかも2位カナダに圧倒的な差をつけての1位である。資本家や貴族を消滅させる共産主義国家を封印した状態でこの結果を出せたのは良かった。

この国の最大POPである「アレマン人スンナ派労働者」も生活水準が「安定」ということで、「世界で最も豊か」ではないが「幸福な」スイスは達成できたのではないかとは思う。

各階級比較はこのような形に。下層階級は生活水準が上がってきてもあまり贅沢品は買わない模様。

 

恒例の20年推移比較。今回は1896年⇒1916年と1916年⇒1936年の2パターンを両方出してみよう。

最後の20年間はGDPの伸び以上に人口の伸びが大きくなったことが、最終的に人口1人当たりのGDPで2位に甘んじる原因となったのかもしれない。貧しい地域からの移民の増加により識字率も寧ろ下がってしまった。

最後の20年でもウズベク人、トゥアレグ人、マグリブ人などの大規模移住が発生。

西スイス(ベルン)の人口は576万人に達し、摩天楼の聳え立つ大都市へと成長した。

各職業・文化・人口の1896年⇒1916年および1916年⇒1936年の変化は以下の通り。

最後の20年になってようやく労働者の政治力が資本家のそれを上回る。古いバージョンに比べ小ブルジョワが強くなりやすいとはいえ、最後まで労働組合(共産党)と小ブルジョワ(国民戦線)とが鎬を削りあっていた。

あとイスラーム圏から大量の移住を得たことによりスンナ派が国内最多数派に。

まさに多文化主義国家である。

 

と、言うわけで今回はここまで。

内陸・2州のみという、内政するにはハンデの大きいスイスではあったが、プレイヤーが入ってしっかりと経済を回せば割と問題なく戦えることが分かった。最後は防衛戦争で結構熱く戦えたし、それなりに満足である。

 

次はVer.1.6の様子を確認しつつ、非西欧国家でやりたいところ・・・。

 

また見て頂けると幸いだ。

 

 

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*1:これはゲーム的にもその通り。広い戦線ではごくわずかな兵で守りに出ないといけない場面が多く敗北が嵩んだが、戦線が限定的になると一度に発生する戦闘が1回か2回と少なくなり、その分防衛側の質としては圧倒的に高いスイス軍が数的にも不利になりづらく防衛に成功する頻度が爆増した。